。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。
「ぎくしゃくしてるのは一方的にあたしだけです…」
戒は普段通りだし。
あたしがエリナみたいに大人になれないから。
「そうかしら。戒さんもどこか不自然ですわよ?」
今はレジ係りを務めている戒の方を目配せしてキリさんは意味深に笑った。
「不自然―――……?」
「ええ、だって今日の彼が朔羅さんを見る目は―――
会長があなたを見る目と似ていますもの」
叔父貴の……
あたしは目を開いてキリさんを凝視。
「どう接していいのか悩んでる、って目」
キリさんはあたしの鼻の頭を指で指すと、うっすら笑った。
指を指されてあたしは寄り目。
う゛~ん…戒が悩んでる??
そんな風に見えないんだけど。
「いくつになってもフクザツなんですね、男の子ってのは」
キリさんはイタズラっぽく笑ってアイスコーヒーに口を付ける。
「まぁ鴇田はあたしが想像する以上にフクザツにできてそうだけど」
腕を組んで考えてると
「仲直りなんて簡単ですよ。
お互い素直になればいいだけのことです。
幸いなことにあなた方はまだ若いんだし、素直になって向き合うこと、私たち大人より簡単にできるはず」
キリさんはさっきの冗談ぽい顔から一転、少し顔に翳りを浮かべて目を伏せるとストローの先を手にしている。
「歳を取るとね、大人になると―――
簡単なことができなくなる。
歳を重ねた分経験は増えるけれど、若いときにできたがむしゃらな冒険もできなくなるんです」
キリさんは頬杖を着いて外の様子を眺める。
キリさんの視線の先には、ガードレールにもたれてタバコを吹かしながら電話をする鴇田の姿があった。