。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。




「何故、鴇田さんのところに?」


俺も一番不思議だったことを彩芽が代弁してくれたが、俺だって分からないし肩をすくめた。


「鴇田はお前の片腕だったな。だが信用できるのか、あの男を」


タチバナはいつになく真剣な顔で目の端を不穏に光らせて聞いてくる。


俺は飲んでいた日本茶を


コンっ!


少し乱暴に置き、


「貴様、鴇田を疑うのか。


あいつは俺がもっとも信頼して傍に置いてる男だ」


低く言ってタチバナを睨むと、俺とタチバナの間で不穏な空気が流れた。


目に見えない静電気のようなものが空気を伝わり、ピリピリと二人の間を振動させているようだ。


その間に入ったのはやっぱり彩芽だった。



「まぁまぁ、お二人さん。喧嘩はそこまでにしましょう。


橘くん、龍崎さんと私たちはいっときの手を組んだだけのにわか同盟。


一方、鴇田さんと龍崎さんは二十年来のお付き合いのある方。


どちらを信用しろ、なんてバカげた質問よ」


「分かってますよ。“あの”鴇田がリュウを裏切るなんて考えられないけど、スネークが絡んでるとなると全部が疑わしくなる」


タチバナは乱暴に味噌汁を啜り、だがすぐにその手を止めた。


「のんびり朝食って気分でもねぇな」


と吐き捨てるように言う。


「全部食べてね橘くん。朝食は一番大切なのよ?一日のはじまりだし。


そして龍崎さん、こうも考えられないかしら?


スネークは我々の仲を混乱させようとしてる。その企みがあるのなら、ヤツが鴇田さんに書面で送りつけてきたのも分かるわ。


わざわざ鴇田さんを介して教えてきたのはヤツの“挑発”そして我々の“混乱”


二つを招こうとしている」


いがみあっている俺とタチバナの間で唯一冷静な彩芽がそう答えて人差し指を立てる。





「あなたがもっとも信頼を置いている鴇田さんを伝言板にしたのは、あなたと鴇田さんの間に亀裂を生じさせるため。


そう考えるのが妥当よ」








俺と鴇田の間を―――引き裂くため―――……?










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