。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。
俺は鯖の塩焼きの、最後の一口を口に入れて、殺し屋についての会議も終わったし
「今度、朔羅をここに連れてこようかと思う。あいつ喜ぶと思うか?」
今度は恋の相談。
「女はこうゆうところ好きだろ、なぁ彩芽」
一応“女”である彩芽に聞くと
「人それぞれじゃないかしら。でも嫌いじゃない女はいないと思いますけど」
と、ふふっと笑う。
「やらしい~な♪リュウ。この部屋露天風呂付だぜ?
ナニ考えてるんだ?」
「ナニって…ナニだ。決まってンだろ?」
俺が片眉を吊り上げて食後の茶を飲んでいると
「タチバナくんだって、奥さんと温泉旅行行ったっとか言ってたじゃない。
タチバナくんの“奥さん”なかなかの美人さんよ~」
と彩芽さんは俺にこそっと教えてくれる。
ほ~…さぞその美人の嫁にデレデレしてる姿が思い浮かぶ。
「うちの嫁はなかなか激しい性格でな、口は悪いし、態度もでかい。細かいし俺はしょっちゅう怒られてる」
タチバナの嫁と言うから、どんな女かと思いきやなかなかいい女じゃないか♪
“この”タチバナを尻に敷くとか。笑えるぜ。
しかも美人ときている。
こりゃ是非、見てみたいものだ。
「んで?お前は未成年の朔羅をこの宿に連れ込んで、イケナイことしようと企んでるんだな。
未成年者略取は結構な罪に問われるからな、気ぃつけろよ?」
とありがたいアドバイスを貰ったが
「俺の誕生日だ。ただあいつとここで―――
ゆっくりと過ごしたい。うまいもん食って、温泉入って、くだらないことを話し合って
そう思ってるだけだ」
ただそれだけ。
望むのは朔羅と共に煩わしい何もかもから開放されて
たった一瞬だけでいい
二人で笑い合えれば
俺にはそれで充分だ。
「切ないな」
タチバナが茶を啜りながら目を細め
「ええ、切ないわね……」
彩芽も同じように睫を伏せた。
「損な性分だな、お前も」
タチバナに言われたが、俺はそれに何も返さなかった。
損な性分。
それで大いに結構。
俺はただ―――あいつを泣かせたくはない。
ふと朔羅を思い浮かべて、この部屋で泣き崩れた鴇田を思い出した。
あんな風に―――大切な人を悲しませたくない。
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