。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。
影武者―――……
「つまりはあれか。通りすがりの見ず知らずの人間でも、誰でもおかんたちになれるってわけか」
「正確には監視カメラに映った人間が彼らに代わるだけで、物理的に本人にはもちろん変われません。
でもハッキングをしているだろうスネークの目はごまかすことができます。
ようは記録の塗り替えです」
「そ、それって!たとえば…新大阪の駅に居るはずのない鈴音姐さんが、居ることにできるってこと?」
あたしが目を上げてキョウスケに聞くと
「そうです。
このシステムを使えばあらゆる場でもあらゆる状況でも監視カメラがある場所なら塗り替えは可能。
さらにクリック一つで簡単に塗り替えることが可能です」
キョウスケがいつになく真剣に言って、ことの重大さが分かった。
あたしも戒もごくりと喉を鳴らし
「無意味な東京見物やなかったってことやな。
ハイテクを駆使してるスネークの、まさに逆手にとった作戦てわけか」
戒も眉間に皺を寄せてディスプレイを眺める。
「お嬢が忍び込ませてくれた監視システムのおかげで鴇田さんたちのもくろみが判明しました」
叔父貴―――……そのためにわざわざ危険を顧みず白虎の幹部を呼び寄せたってのか―――
「衛星をハッキングするやなんて、普通考えんやろ?
あいつら、どえらいことやりよったな」
戒が口元に手やり目を開いてPCを凝視。
「なるほど、スネーク対策か。メリットとデメリットは?
穴はないんか?」
戒がキョウスケに聞くと
「メリットはこの顔認識システムで彼らの居場所を偽ることができる。
そしてデメリットは、このシステムが流出すると悪用される可能性があるということ。
スネークの目に止まったら、危険極まりない」
キョウスケの言葉にあたしたち三人はそろってごくりと喉を鳴らした。