。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。
「あたしが軽率だったんです。
ごめんなさい」
新垣 エリナは前置きも何もなしに頭を下げてそう謝った。
頼んだメニューが運ばれてきて、新垣 エリナはとつとつと話し出した。
「あたし……親にメイクアップアーティストの専門学校行くの反対されてて、大学行かないのなら学費は出さないって言われてたの」
それは以前にもちらりと聞いた。
「でも、どうしても夢を諦められなくて、やる前から諦めちゃうのが悔しくて
だから自分でお金貯めて専門学校受けようと貯金中なの」
前も思ったけど…大人しそうな顔してガッツがあるよな。
てかしっかりしてる。
自分の考えしっかり持ってて、そうゆうとこちょっと憧れる。
「でも学費代だけでも相当な額ですよね」
キョウスケがコーヒーを口にして新垣 エリナを見た。
戒はキョウスケの隣で黙って話を聞いている。
「そうなんです…だから高額な時給のガールズバーのバイトを。
最初は軽い気持ちだった。
キャバクラよりもゆるいし気軽だし。若い子も多かったから。
カウンターを挟んでお喋りするだけだし。気に入られたらお客さんからチップもらえるし。
お金が欲しかったんです」
新垣 エリナは素直に言って、でも言った言葉に恥ずかしくなったのか僅かに俯いた。
「お店は……二十歳以上じゃないと働けないけど、あたしみたいな子結構多かった」
「それはつまり…」
あたしが言いかけて、新垣 エリナは顔をこちらに向けて力なく笑った。
「年齢偽ってた子が結構多かったってこと。
お店の方もそれとなく気付いてただろうけど、知らないフリって言うか…
でも、ある日
あの男―――テニス部のコーチが客として来たんです」
そこまで言って新垣 エリナは眉間に皺を寄せ、あたしから目を逸らすと俯いた。
あたしの手をぎゅっと強く握ってきて、その手にひらにうっすら汗を掻いていた。