。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。
「あくまでコカイン中毒死の“疑い”と言っています。特定したわけじゃない。
それに死後に注射されても、警察にとってはあまり関係ありません。
むしろ願ったりじゃないですか。
コカインを言い訳に、堂々と捜査が出来るってわけですよ」
そんな……
あたしは思わず心臓の辺りを手で押さえていると
「問題はその事件を何故鴇田に報せてきたか、ってことだよな」
「鴇田さん経由で俺らに話が伝わること―――Sと名乗るものは分かっていたんじゃないでしょうか。
だとするとSの狙いは俺たちを畑中組のカジノに向かわせるのが目的ですね」
キョウスケの説明にあたしは首をひねった。
「そこまでうまくいくかなぁ。
だって鴇田とあたしらって親しくないし。むしろあっちだってあたしらを嫌ってるふしがあるのに。
絶対に情報がうちらに回ってくる―――なんて確証はないよ。
ある意味スネークの賭けだよ」
「いや、Sはスネークかどうかまだ判明してない。
神社で襲ってきた男二人を殺したのは白へびだ」
そっか……
「どっちにしろSと名乗る人間は……頭が非常にキレる人間だ、と言うことでしょう。
鴇田さんが絶対に俺らに…いえ、俺に接触すると言うことは分かっていた。
いや、仕向けた」
キョウスケはあたしの顔をじっと見つめて、どこか切なそうに瞳を揺らした。
「きっと彼の“弱み”を逆手に取ったんでしょう」
弱み……
「まぁあいつ色々秘密が多そうだしな。ミステリアスっての?」
戒は肩をすくめて、それほど鴇田の“秘密”については興味がない様子。
「スネークか白へびにしろ、俺たちをカジノに導いているのは確かなことだ。
或いは罠か―――
それ自体が危険な賭けだな」
導きか、
罠か―――
戒の言う通り、危険な賭けだ。
そこに何があるって言うんだ。