。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。


にっこり微笑まれてあたしの頭をそっと撫でられる。


あったかい手。


「一結ってね、お店の名前と一緒でしょ?


きれいでしょー。ママは絶対女の子が生まれたらこの名前にしようと思ってたのよ。


あの日、あの昼



この場所で私はパパと結ばれたの。


意味わかるかな?」



やんわりそう聞かれてあたしはゆるゆると首を振った。


「運命の出会いをしちゃったのよ、私たち。


一結のパパはそれはそれは恐ろしい顔で怒鳴ってて、ママはみっともないけど震えて動けなかった」


意味はわからなかったけれど、ママが怖い思いをしたことだけは分かってあたしはぎゅっとママの背中にしがみついた。


小さいながらもママを守るように。






「でもね



パパはママに怒ったわけじゃなくてね、すれ違うほんの一瞬『迷惑かけてごめん』って頭下げてくれたの。


分かる?いけないと思ったことをちゃんと謝れる人が素敵なのよ?」


「ママもパパのことすてきだとおもったの?」


「そうよー。


ママはあの瞬間恋をして、私たちは結ばれ、そしてあなたが生まれた。


あなたは私にとって大切な宝物なの」



たからもの




「あなたのパパね。


〝翔”って名前なの。素敵な名前でしょう?


どこまでもどこまでも自由に空の上を駆け回るきれいな鳥のように」


「しょう…」


あたしは小さく口の中で呟いた。


「そうよ、翔って言うの。













翔―――




愛しくて愛しくて


その名を何度も呼んだわ。


彼が私の手から飛び去ってもなお―――


いいえ、手放したのは私」




自由に飛びまわる鳥。


あたしが空を見上げると、青い空に一匹の白い鳥が羽をはばたいて横切っていった。












その名前を呼ばずにはいられない。



ママはずっとずっとパパを愛してた。


あたしは会ったこともないパパにずっと恋してた。






ママの大切なひと。



どんな人なんだろう。




きっとあの鳥のように美しく、自由で、気高い…








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