。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。




「あたし、あんたを想うことやめる」


あたしの言葉に目の前につっ立っている男は目を開いた。


「身を引くとかガラじゃないけど、もういい加減疲れたの。


あんたがあの子のこと忘れられないことぐらいわかってる。


あたしの方を見てくれない男なんて―――



いらない。


だから





バイバイ」





泣きそうになるのをなんとかこらえて最後まで気丈に振舞うあたしは、この男の目にどう映るだろう。


気が強くて自信家で、わがままでプライドが高いあたしには涙なんて似合わない。


失恋ごときで涙を見せるなんて、そんな安っぽい女にはなりたくない。


それにこの男だって望んでないだろう。




フられると気づいた時点であたしはこのゲームから降りた。


この完璧なあたしがフられるとか


傷つくとかありえないから。



だから




「ばいばい」



あたしは立ち去る。


いいえ、結局逃げたの。



怖かった。あんたから―――「好きじゃないからごめん」って言葉を聞くのが。


傷つくのも傷つけられるのも怖かった。


だから逃げた。




大好きな人に背を向けて。


精一杯、最後の最後まで彼の目に美しい自分を焼き付けるように。



さよなら









響輔。










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