。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。



「最初は割り切った関係だと思ってた。


コーチは…とにかく若い子が好きで、あたし以外にもテニス部の誰々とキスしてたとかそうゆう噂をしょっちゅう聞いてたし。


あたしのことも“好き”とかそんなんじゃなく、ただ若い子の体だけが目当てだと思ってたから。


何度もホテルに行って、求められても目を瞑ってれば過ぎていく。


あたしは大勢いる相手の一人。


元々あたしが悪いんだし、あたしが卒業するまでの我慢だ。


そう思ってやり過ごすしかない……そう思ってた」


それだけでも十分な仕打ちだ。


「ゲス野郎」


キョウスケが額に手を置いて低く唸り、


あたしもそれに同意した。


「でも、だんだんコーチが粘着質になってきたの。


最初は…あたしの帰りを待ち伏せしたり、あたし一人にコートの片付けを命じて、片付けが終わって一人で更衣室で着替えてるときを狙ってきたり。


だんだんエスカレートしてきて、電話もメールも頻繁に来るようになった。


あたし怖くなって……だからテニス部も辞めた」



それが―――前に話してたストーカーだったってわけだ。



「テニス部を辞めたらそれほど接点もなくて、数ヶ月は割りと平和に暮らしてたけど


あたしが龍崎くんに告ったときぐらいから、


またメールや電話が頻繁に掛かってきた。




“俺を裏切る気か!”とか“お前を誰にも渡さない”とか



“お前は俺だけのものだ”とか」




あたしは目を開いた。


あの時期―――確かに噂になった。


マドンナが戒に告ってフラれたとか……あたしは告白の現場を目撃したけど、戒が断ったことも知らなかったし、


ついでにそんなこと誰にも言ってない。


けど、噂なんてどこからでも立ち昇る。


そしてその噂の火の粉はやがて辺りに広がり、炎上する―――



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