。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。


「youちゃん撮影今日で最後ってホント?」

「ううわ、ショック…」


と方々でスタッフ(主に男)が声を掛けてきて私は曖昧に笑顔を返した。


ドラマは最終話まであと四話残っている。


それなのに最後まで出来上がっていた脚本を脚本家に書き換えさせ、“サヤカ”をこのストーリーから追放したのは


言うまでもなく主人公役の某アイドル。


大手芸能事務所のアイドルで、清純派とうたっている女はテレビでは天然を装って先輩や男性アイドルたちから可愛がられているけれど、



本当は性格どブス。さも何も知らない処女みたいなウブな女を装っているけど


業界では若手イケメン俳優やモデルを片っ端から食ってると言う噂。


それはそれは、まぁ聞いたら耳を疑いたくなるようなアバズレっぷりで。


まぁあたしだって似たようなことしてたし、あれこれ言えないけど。


でもあたしの場合は


仕事のために力や権力のある男に媚売って、人に言えない『営業』してただけよ?


男好きと一緒にされちゃ困るわ。


そのアイドルさま(←嫌味)が


『あたしyouと仕事したくない』


と言い出したのがキッカケで『あの女と同じ画面に映りたくない。同じ空気を吸いたくない』と我が儘放題。



当然控え室なんかも別だったけれど、




まさか降板させるとはね。





特に何かをしたわけでもないし、そもそも共演するのがこのドラマが初なのだ。


あたしのこと“生理的に受け付けない”のね。きっと。


あたしとそのアイドルが被るとき、それはそれはもうマネージャーをはじめとするスタッフが気を遣うこと。


あたしは女のやっかみなんて今にはじまったことないから気にも止めてなかったけれど


スタッフたちはいい迷惑よね。


事務所の兼ね合いもあるからそうそう簡単にあたしを降板にもできず


だけどとうとう


「あの女を降板させなきゃ、あたし演らないから!」


と言い出しへそを曲げて、最初は口だけだろうと思っていたけど撮影時に現れなかったのを知ると


スタッフは大慌て。



まぁ当然よね。知名度や人気で言うとあたしなんてまだ足元も及ばない。


そんな性格どブスは演技なんてそれほどうまくないし、アイドルって言うわりには大して可愛くもない。


ずば抜けてスタイルがいいわけでもないし。


正直あの女に「勝った」と思われるのは癪だし、負けを認めたくもなかったけれど


今や彼女のネームバリューがドラマの視聴率に影響してくる、と言うのだからテレビ局も必死なのだろう。


あたしを降板させる方向へ落ち着いたワケ。








< 440 / 841 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop