。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。
嘘よ。
傍に居て欲しくないなんて嘘。
本当は辛い。
本当は悔しい。
本当は
ぽつり…
あたしの腕に冷たい何かが落ちて、響輔が戸惑ったように目を開いた。
「こう見えても悪かった思うてるんやよ?
あんたの都合も迷惑も顧みず来てもうたこと、謝るから。
せやから泣かんといて」
泣いてる……?
あたし泣いてるの………?
やだ、メイクが落ちちゃう。
響輔の前で最高に美しいあたしでいたいのに、マスカラやアイラインが落ちたらパンダになっちゃうし最悪。
頭では現実的なことを考えているのに、あたしは何もできずにただ響輔の行動を見守っていた。
響輔は弁解するように慌てて、片手でジーンズのポケットを必死に探っている。
何をしているんだろう…
あたしは目頭にたまる涙の雫を拭いながら目を上げると
ふわっ
何かがあたしの頭にかぶせられた。
柔軟剤と、ほんの少しタバコの香り。
それが響輔が腰に巻いていたシャツだったと知るのが数秒遅れて、あたしは赤青白のチェック柄の波を見て目をまばたいた。
「ほんまはハンカチとかがええんやろうけど
こんなもんしかあらへん。堪忍してや」
シャツの裾の部分で響輔はあたしの目元を優しく拭ってくれた。
響輔―――――……
居て欲しくないときなんてない。
辛い時も悲しいときも、寂しいときも嬉しいときも
あたしはやっぱりいつもすぐ近くであんたを感じていたい。
あんたとこの感情を分かち合いたい。
あたしって変かな。