。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。
「わりっ!」
千里は慌てて離れて、あたしも
「う、うん!」
ぱっと顔を逸らした。
抱きしめられたわけじゃない。
ただ
思った以上に千里の顔が近くにあってびっくりしただけ。
いつも通り―――は、やっぱり難しそうだ。
図書館の中は、外の蒸し暑さが考えられないほど冷房が効いていて涼しかった。
エアコン目当ての小学生たちが児童コーナーで騒いでいて、司書さんに注意されているところだ。
他にはいかにも受験生ぽい中学生や高校生、レポートでも書きにきたのか大学生の姿もちらほら、やっぱり学生が多い。
図書館の勉強コーナーは大きな木製の机が並んでいて、あたしたちは宿題のレポート用紙を広げながら、しばらくは会話もなくレポート用紙に大人しく向き合っていた。
だけど…
十五分ほど経って。
「分かんね。朔羅ここの問題解けた?」
「お前が分からないのにあたしが分かる筈ねぇだろ?」
「だよなー」
「「…………」」
結局、おバカ同士が集まっても進まない。
「リコを呼ぼっか。教えてもらおうぜ~」
我ながらナイスアイデア♪だと思ったが
「来るかな……リコのヤツ最近ノリが悪いんだ。遊びに誘っても全然ノってこなくてさー」
千里がシャーペンの先でこめかみを掻いた。
「え…?そーなの?」
「てっきりお前と先約があるから、だと思ってたけどそうじゃなさそうだし。
何て言うかサ、ホットケーキパーティー以来元気がないジャン?あいつ。
まぁ俺の思い過ごしかもしれないけど。
お前ら何かあったの?喧嘩したとか」
千里が心配そうに聞いてきて、
ホットケーキパーティー以来……と言う言葉にあたしは思わずまばたきをした。
その日はリコがキョウスケに失恋した日―――