。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。
俺の質問に対して響輔は口を開くことがなかった。
昔っからそうだったな。
その場限りの嘘もつかない。そこが響輔の良いところでもあるけど。
だけど今は―――
響輔の口の堅さが
イラつく。
苛立って前髪を乱暴に掻き揚げ、グラスにぎゅっと力を入れると俺の手のひらで温まったのか氷がじわりと溶け出した。
「何でだんまりなんだよ。昔から何でも話してきたろ?
それこそ俺の失敗談や、かっこ悪いとことか、恋愛相談なんかもしちゃったりしてきた仲だってのに。
俺たちの間で隠し事なんてなかったろ」
響輔はまばたき一つせず、顔を逸らそうともしない。
ただじっと―――まっすぐに俺を見据え返しているだけだ。
その真剣な黒い目を見て―――気付いた。
響輔が俺たちの関係にヒビを入れてまで黙るにはワケがある。
響輔が何としてでも守りたいもの―――
「俺たちのことじゃない……?
朔羅に関わることなのか」
俺の言葉に響輔はここではじめて俺からゆっくりと視線を逸らした。
「事実関係がまだはっきりしていないので、迂闊なことは言えません。
ただ…俺の口から軽く喋れるような内容でないことは確かです」
少しだけ悲しそうに笑って、響輔はグラスにコーヒーを入れると俺を置いて席へと戻っていった。
その背中を見送りながら、
何でだよ
何でそんな細い背中で何もかも背負おうとするんだよ。
もう少し俺を頼れよ。
お前の抱えてる荷物、俺にも持たせろよ。
俺の中で違う種類の苛立ちが生まれた。