。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。
「警視庁捜査一課の者です。
少しお話を伺いたいのですが」
肩書きは“警視”となっていた。
警察組織のこと詳しくは知らないけれど、その立場が上の方だと言うことだけは分かる。
この若さでこの肩書だから、キャリア組ってやつか。
「あの…!youが…イチが何をしたって言うんですか」
マネージャーが刑事の背後から喚く。
あたしは時々思う。
マネージャーはあたしの実の父親よりも親らしい。
金のたまごに何かあったら困ると思ってるかもしれないけど、マネージャーは大事な商品を守ってるだけかもしれないけど
でもどんな理由であれ、愛を感じるよ。
まるで娘を庇うようなその必死な形相に、
「大丈夫、あたしは何もしてないわ」
と安心させるように無理やり笑顔を作った。
「落ち着いてください。少しお話を伺うだけですよ」
刑事はその美しい顔に似合う爽やかな笑顔を浮かべて軽く手を挙げる。
まるでギリシャ彫刻のように整った―――人形のように何もかもが完璧なその顔の造りの中
切れ長の眼の奥で異様なほど鋭い光を湛えている。
大丈夫、って言ったけれどそれは強がりで、
何こいつ…
―――怖い
思わずテディをぎゅっと抱きしめると
「二三お話を伺いたいだけですよ。これから収録でしょう?
お手間は取らせません」
どこまでも丁寧な口調はどこか機械的で、あたしはぎこちなく頷いた。
本当は今すぐにでも追い出したいところだけど、有無を言わせない尋問口調にそれが出来なかった。
大体にしてあたしが直接的な犯罪を犯したわけじゃない。びくびくするのも間違っている。
堂々といればいいのよ。
堂々と―――
けれど
「杉並区で起こった放火殺人事件をご存知で?」
いきなり的を射た質問にあたしは目を開いた。
刑事からしたらまだほんの小娘なあたしに、あくまで丁寧な口調で聞いてきて
あたしはぎこちなく首を縦に振った。
「ニュースで…見ました……」
何故か口ごたえは一切許されない雰囲気の中、唯一マネージャーだけは冷静(?)で
「何言ってるんですか!youがあの事件に何の関与をしてるって言いうんですか!
この子があんな恐ろしい事件と関わってるわけないじゃないですか!」
と、声を張り上げた。