。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。
ペースを乱される。
響輔のときもそう思ったけれど、この男は違う。
敢えて乱している。
そう感じた。
(ちなみに響輔は天然で究極のマイペース男だから)
この男に―――
リズムを崩される。
厳しい詰問口調で尋問してくるかと思いきや、突然柔らかく優しくなる。
けれどきっとその何気ない会話もきっちり記憶して事件と関係がないかどうか選別してるに違いない。
油断するとあっという間にその手で絡め取られそうな―――
けれど
「知りません」
あたしは、はっきりそう答えた。
だって本当のことだし。
「大体あたしが何であの事件と関わってるって思うんですか。
あの倉庫も知らないし、行ったこともない。ニュースで見てはじめて知ったぐらいよ」
あたしが目を吊り上げて刑事を見上げると、刑事は切れ長の目を細めてあたしをじっと見下ろしてきた。
今度は何を言われるのだろうと構えていると
「突然すみませんね。今は関係者全員に事情を聞いて回ってますので。
お気を悪くされたらすみません」
刑事は似非くさい笑顔を浮かべてにやりと笑う。
「関係者……」
マネージャーが刑事を見て
「ええ、あの倉庫は彼女の父親の“上司”である男の傘下の名義になってまして……」
ここではじめて気を遣ったのか、マネージャーの方を気にしながら言葉を濁す刑事。
あたしは腕を組んで「ふん」と鼻息を吐いた。
「知ってるわよ。マネージャーは。
あたしの父親が鴇田組の組長だってこと」
あたしが言ってやると、刑事は意外そうに目をまばたいて、そしてまたも小さく笑みを浮かべた。