。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。
「芸能界では別段珍しいことじゃないんです。裏でヤクザと繋がってるとか……
あの、でもこれは……オフレコでお願いします。youはまだ駆け出しの女優なので。
イメージが悪くなると困ります」
マネージャーがさっきの威勢を仕舞いこみ、懇願するように刑事を見上げた。
「ええ、知っていますよ。大丈夫です。
ここでの話は一切口外いたしません。
では話が早い。あの燃えた倉庫は龍崎 琢磨の縄張りの一つ、畑中組が所有していた倉庫です。
あなたはお父さんからそのような話を聞いたことは?」
刑事に聞かれてあたしは首を横に振った。
「血は繋がってるけど、父親って言っても名前だけのホゴシャなだけ。
一緒に住んでないし。
親子らしいことなんてないし、そもそもあいつが仕事のことをあたしに話すことなんてないわ」
「仲が悪いんですね」
刑事はさっきまでの険しい表情を少しだけ緩めてほんの少し目尻を下げると、やんわりと笑った。
こうやって見るとやっぱり本当に美形で、その整った顔から零れる笑顔は、尋問するためだけの武器だと知っていても―――気を許しそうになる。
玄蛇のバカ。
ネズミだって言うから「ネズミ男」みたいなのを想像してたのに。
全然違うじゃない。
まぁ確かにちょっとの隙間でもあっさり入り込んできそうではあるけれど。
刑事は長い睫をほんの少し伏せて色っぽい口元の口角を上げうっすら笑う。
「私も実の兄と仲が悪いんです。兄弟と親子じゃ意味が違うかもしれませんが
一番近くに居るのに、だからこそ
一番我儘になるのかな
そして一番知っているようで
もしかして一番知らない存在なのかもしれない」