。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。
「触らないで!!!」
あたしは叫ぶように言って刑事の手を乱暴に払った。
「you…」
マネージャーが心配そうにぎゅっとあたしの肩を強く抱きしめる。
「プライバシーの侵害よ!他人に見られたくないメールの一つや二つぐらいあんたにだってあるでしょ!」
ケータイを胸に抱いて刑事を睨みあげると
「ないとは言えませんね」
刑事はあっさり答えて手を引っ込める。
「あの…、youはこれからバラエティ番組の収録があるんです。生じゃないですけれど、動揺させないでください」
マネージャーはあたしの肩を撫でさすりながら懸命に刑事を見据える。
あたしとマネージャーの関係は数ヶ月前から。
けれど四六時中一緒に居て、いちいち小言が煩いし、面倒なところはあるけど
でも
あたしのこと信用してくれてる。
バカみたい。
あたし本当は信頼されるような女じゃない。
今までだってたくさん男と関係を持って、利用して這い上がってきた汚れた女なのに。
今回だって玄蛇がやってないにしろ関わりのある人間が殺したってことは知ってるのに。
こんな薄汚れた女を本気で庇うなんて。
ばっかみたい。
でも
たとえ商品だとしても、こんな風に守ってくれるのなら、
あたしも彼女の立場を
守らなきゃいけない。
「これは任意なんでしょう?
だったらケータイは渡さないわ。どうしても欲しいのならしかるべき手順を踏んで令状を持ってきてからにして。
じゃないと渡さない」
あたしは真正面から刑事と対峙すると、はっきりと言い切った。
刑事は険しかった眼をさらに細めて、物珍しそうにあたしを見下ろす。
あたしはぎゅっとスマホを胸に抱き、刑事を睨みあげた。
このケータイは渡さない。
そう言う意味で。
刑事がすぐ近く……まるでキスシーンの演技をするぐらいに距離を縮めて
「刑事に追い詰められる容疑者でも演じたことがあるのか。
君はなかなかの女優だな。そこいらのアイドルよりよっぽどうまい」
さっきまでの丁寧な口調から一転、馴れ馴れしい…というよりも妙に迫力のある声であたしに迫ってきた。
それはヤクザが発するいわゆるドスがあると言うのとは違う種類の迫力だった。
「けれど
刑事相手にその演技力で騙せると思うなよ?
お遊戯は終わりだ。俺もいつまでも茶番劇に付き合うつもりはない。
“スネーク”に伝言だ。
必ずお前を捕らえると、な」