。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。
「お客様…周りのお客様のご迷惑になりますので…」
と、ウェイターがおずおずと注意しにきて、
「分かってるよ!」
俺はウェイターを睨み上げ今にも立ち上がりそうな勢いで腰を浮かすと、ウェイターはびっくりしたように…或は怯えたように後ずさりして
「戒さん落ち着いてください。警察呼ばれます」
と冷静な響輔が俺の両肩に手を置き、俺を座らせた。
分かってんよ!
ってか…どうなってんだよ!
朔羅が倒れたって…ついさっきまで元気だったじゃねぇかよ!
「とにかく御園に…」
言いかけてそのケータイを響輔が奪っていった。
「もしもし?響輔です。
一ノ瀬君、とりあえずタクシーを拾って、その近くに大きな総合病院があります。
〝御園医院”ってところです。行先を告げればそこまで連れて行ってくれるはず。
電話は切らずにそのままで―――」
響輔は俺よりも幾分か冷静で、
「戒さん、俺たちも行きましょう。御園医院まで。タクシーを飛ばせば三十分で行けるはず」
そう説明しながら席を立ちあがり伝票を手にした。
注意しにきたウェイターはまだ怯えた様子で…けれど店を出て行こうとする俺たちにほっとしたようだった。
「―――タクシーを拾った?―――ええ、行先は御園医院で。
着いたら総合受付で内科の鴇田医師に急患だと伝えてください。
『龍崎組のお嬢だ』と言えば大至急診てくれるはずです。
ああ、会計は一緒でいいです」
最後の言葉はレジに向かっている店員に向けた言葉で、響輔はケータイを肩で挟んでジーンズの尻ポケットから長財布を取り出していた。
「お会計¥1,260です。レシートご利用ですか?」
さっきの店員がおずおずと聞いてきて
空気読め、バカ店員!
俺はまたも怒鳴りそうになったが
「要りません。レシートも釣りも」
響輔はまたも冷静に答えて、電話に向き直った。
「一ノ瀬くん、お嬢の状態は?
痙攣は―――…ない?脈は…―――落ち着いてください……手首を握れば分かります。
呼吸は―――」
と、医者のような質問を冷静に繰り出している。
その間俺は大通りでタクシーが通らないかきょろきょろ。
時間帯が時間帯なのか、いつもはイヤと言うほど見るタクシーも今日に限っては何故か全然通らなかった。
こんな時に限って。
くっそ!何で通らねぇんだよ!!
焦りと苛立ちでどうにかなりそうだった。
朔羅―――
待ってろ、すぐ俺が傍に行くからな。