。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。
資料室はこのビルの二階下にある。
ビル自体は龍崎グループの持ちビルで、この建物まるまる龍崎グループの関係会社が入っているが、
その全部が俺の名義になっている。
龍崎グループを設立した年の俺の誕生日に、会長からプレゼントされた。
ビルまるまる一つプレゼントってどんな贈り物だよ。
東京の一等地に土地を買い、さらには建物の費用も全部会長持ちだ。
数百億はくだらないだろうその買い物に、会長は一瞬の躊躇もなかった。
ちょっと驚いたが、そんな大胆なことを簡単にやってのけるのが
会長だ。
『税金対策でお前の名義にしてある。
お前の好きにするがいい』
なんてこれまた男前な台詞に、俺が女だったら―――きっと惚れてるに違いないな。
と思ったこともある。
以来、俺は二十数名居る事務員(会計士、税理士……もちろん全員ヤクザ)と、この事務所を守っている。
その建て物のワンフロアを贅沢に使った資料室は、ぎっしりと経理資料のファイルで埋まっている。
資料は年代別、種類別に揃えて棚に陳列してあるから探すのは割と簡単だ。
俺は目当ての資料が保管してある棚を目で追っていると
ム
一番高い場所にあるじゃねぇか。
あれじゃ俺でもさすがに無理だな。
誰だよ、あんなところに資料保管したやつぁ。
仕方なしに脚立をきょろきょろと探していると
「あっれ~??組長ぉ?めっずらしー
資料探しですかぁ??」
すぐ背後でいつもの間の抜けた声が聞こえてきて
俺は
ガクリ、肩を落とした。