。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。
「離れろ。じゃないと今すぐ貴様をぶち殺すぞ」
本気になって声を低めると、タイガは俺から手を離し軽く肩をすくめて一歩下がった。
これ以上からかったら本気で危ない目に遭うと察したのだろう。長い付き合いだからな。その辺はわきまえてる。
だが―――
くそっ。
何だってんだ、タイガのやつ。
俺が怒ったのは本心を言い当てられたから―――
『………何?』
電話の向こう側でイチが怪訝そうに聞いてきた。
俺は再び電話に向き直った。
動揺を押し隠して。
「何でもない、こっちの話だ。
俺は変わりない。そっちはどうなんだ?仕事中じゃないのか」
慣れない感覚に思わず早口になって聞くと
『………元気―――じゃない……』
イチが暗い声で答えた。
俺はイチのこんな声、初めて聞いた。
落ち込んでいる―――と言った言葉が一番しっくりくるのか、その声は翳りを滲ませていた。
「どうしたんだ……?」
思わず聞くと、
『ねぇ
パパ……』
そう呼ばれて今度こそ俺の心臓が大きく跳ねた。
以前一度だけイチの寝言で呼ばれた。
パパ―――と。