。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。
「衛から聞いたろ?お嬢はただの日射病だ。
点滴を打てばすぐに意識は戻る」
「…ああ。分かってんよ」
俺はそっけなく言ってカーテンを開けて中を覗くと
青白い顔で目を閉じた朔羅が、まるでオーロラ姫(眠り姫)のようなきれいな寝顔でベッドに横たわっていた。
ようは見ようによっちゃ死んでいるように見えるってことだ。
その姿に一瞬ドキリとしたが、朔羅の胸は僅かに上下していて、心音を知らせるモニターからピッピッピと機械的な音も聞こえる。
その様子を
ベッドに横たわって眠ったままの朔羅の手を、両手で包み込むように握っていた
龍崎 琢磨が
酷く心配そうに朔羅の様子を眺めていた。
やっぱりいたか。
龍崎 琢磨は俺がはじめてみる表情―――酷く切なそうに眉を寄せて
悲しそうに目を細め、朔羅の小さな手をその大きな両手で懸命に握っている。
龍崎 琢磨は俺が来たことに気づいていない。
ただ、目の前に横たわっている朔羅を見つめるのに精一杯だ。
その切れ長の瞳が切なく揺らいでいた。
「朔羅」
たった一言呟いたその言葉に
できればずっとその名前を呼び続けたかった。
そう心の声が聞こえた気がした。
五年後……十年後、三十年後
―――ずっとずっと…お前の隣でお前の名前を呼びたかった。
でも実際、龍崎 琢磨が朔羅の名前を呼べるのは五年どころか一年も危ういんじゃないか。
一年…半年―――もしかして三か月後かもしれない。
そう、終わりは突然やってくるのだ。