。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。
衛は「五分経ちましたよ」
と会長に告げたが、会長は本当に衛の言葉が耳に入ってないようで、ただひたすらにお嬢の手を握って彼女の寝顔を見つめている。
「やれやれ…とんだ我儘患者さんだ」
お手上げ、と言う感じで衛は軽く手を挙げ
「とりあえず彼をこのままにしておきましょう。
点滴はしているし大人しくていい」
俺にこそっと耳打ちすると
「君はカーテンの向こう側へ」と俺の肩を押す。
カーテンの内側に会長とお嬢を残し、衛はカーテンを引きながら
「医学では証明できないキセキの力ってあるんだよ。
私は医者だし、非科学的なことを信じたくないタチだが、お嬢さんは彼の…会長の精神的な部分で大きな存在なんだろうね、
彼女の姿を目に入れると少しだけ脈が安定した。
お嬢さんも同じだよ」
そう言って衛は聴診器の先を軽く持ち上げる。
「まるで二人の呼吸が一つになったように
それぞれ乱れて安定していなかったのに、手を繋いだ瞬間
心音が一つになった」
そんなことってあるのか。
「黄龍の伝説が受け継がれているのなら
本当の意味で彼らはきっと
二人で一つなんだろうね」