。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。
黄龍の伝説―――か。
衛はどこまで知ってるのだろう。お嬢が黄龍の一人だと言うこと俺はヤツに話したことは一度もない。
けれど医者であるあいつはお嬢の胸に彫られた紋を見る機会だっていくらでもあるしな
極道組織に全く興味はなさそうだったからスルーしてきたんだろうが。
もし
もし会長にとってお嬢の存在が彼のその体に大きく影響してくるのであれば
お嬢には会長の傍にいてほしい。
勝手な願いだな。
会長を慕っていたお嬢の気持ちを引きはがし、敵方である虎間に引き渡したのは俺たち大人だ。
彼女の気持ちも考えず、青龍の未来と繁栄に、そして絶対的な地位の確保のため
同盟を結ばせた。
かつての俺とさゆりのように―――引き離されて、ただその運命を受け入れるしかできなかったことを思い出すと
それで良かったのか、と問う。
今さらだがな。
本当に今さら―――
カーテンの傍で椅子に腰掛けていると
虎間が現れた。
虎間の姿を目に入れて、考えがまたもぶれた。
若き獅子―――
猛々しいまでの光を宿したその眼の奥で金色に光る一筋の光。
それはまだ粗削りな獰猛さを湛えていたが、会長と同じように気高い。
その眼がカーテンの向こう側を捉えようとしている。
我々の選択は間違ってはいなかった。
青龍の未来を託すには一番良い選択をしたのだ。
世代交代のとき。
はっきりとそう感じた。