。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。
「ただ、で了承するほどお人よしじゃありませんよ」
ガキなくせしてちゃっかりしてやがる。
だがこっちもただで頼むと後で何か言われたとき面倒だ。
「何が欲しい」
キョウスケの欲しがっているものが何なのか分かっていながら俺は敢えて聞いた。
「分かってるくせに」
キョウスケはガキのくせしてちょっと男の色気を漂わせた口元に淡い笑みを浮かべ、切れ長の目の端に黒目をゆっくり移動させ流し目。
どこで覚えた表情なのか。
イチが惚れるのも分かる気がする。
それが何だか憎たらしくて、これが娘に近寄る男へ対する嫉妬心と言うものなのか、
ちょっと考えたがその考えを改めた。
やめよう、考えても時間と労力の無駄だ。
「スネークの情報か。それとも他に何か?」
「とりあえずはスネークの情報で結構です。
あなた方は隠すのが得意なようなので、いくらでも札は持っているでしょう?」
「確かに私たちは札をいくつも持っているが、
それはお前だってそうだろう?
カード交換でジョーカーを引き当てないように気を付けるんだな。
取った手札がすべて安全とは限らない」
俺は組んでいた手を解いて片手をひらりと振った。
悪あがきをするつもりはない。
けれど牽制の一つでもしておかなければ、俺の方が痛い目を見ることになりそうだ。
だがその牽制をキョウスケはあっさりかわした。
「俺たちはババ抜きをしているつもりはありません。
ポーカーですよ」
キョウスケはわざとらしくにっこり笑って、
やがて顔を真顔に戻すと
「レイズ」
短く言って、
「ついでに勝負師でもある。俺らを甘く見ない方がいいですよ?
戒さんはロイヤルストレートフラッシュも出せられる」
ポーカーが得意だと?
くそ生意気なガキだ。
俺は諦めてキョウスケの手を軽く叩いた。
「降参だ。今回はカードオープンしてやるよ」