。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。
「統計論でしょう?
そうされていた人が必ずしもそうなるとは限らない。
俺は大狼さんがそうならない、って可能性の方が高いと思いますけど?」
キョウスケの意外な言葉にちょっと顔を上げると
「何となく…ですよ」
キョウスケは曖昧に笑った。
「それよりも、何で極道に入ったんですか?」
「ああ…そうだったな。てか何でそんなこと気にするんだ」
俺が怪訝そうに目を細めると
「説明はさっきしました」
とキョウスケはうんざりしたように肩をすくめる。
そこに深い意味はなさそうだ。
ただの世間話。
話して損することは何もない。得もないがな。
会長はまだお嬢に付き切りだし、暇つぶしの意味で俺は喋った。
「衛と仲が良かったし、鴇田組にもしょっちゅう遊びに来てた。
優等生だがヤクザに興味がない衛と、反抗しまくりの可愛げのない次男の私。
息子二人がそんなんだから親父に懐いてくるタイガが可愛かったんだろう。
親父はタイガに目を掛けて、十八歳以上になると施設も出なきゃならねぇしその後の世話を買って出たってわけだ。
んで、大学まで行かせてその後鴇田組の会計事務所に所属することになった。
まぁ高校んときにちょっとばかり…いや、かなり荒れてた時代もあったから喧嘩も強かったしなぁ」
タイガが荒れてたって想像できない読者諸君。
どれぐらいかって?
それは高校時代の会長のように、だ。これで荒レベル(荒れレベルの略)が分かるでしょう?
つまり、かなり激しかった。
「髪を銀髪に染めててな、何を考えてるのか分からないヤバイ目をしてた。
ま、今でも違った意味で何考えてるのか分からんヤバい目をしてるがな。
とにかくそのときあの辺一帯では“銀狼”って通り名がつくぐれぇ恐れられたんだ。
笑っちまうだろう?」
俺は失笑と言う感じで笑ったが、キョウスケは目の端をぴくりと動かしただけでその表情を少しも変えなかった。
「まぁ今でも?違った意味で恐れに値する人物ですが」
とため息を吐きながら肩をすくめるキョウスケ。
「まぁ元々頭はいいヤツだったし、親父に恩を感じてたってのもあるんだろうな。
組に入ってからは真面目に(?)ちゃんと働いてた。
以上」
俺はそう締めくくり、キョウスケはちょっと考えるようにこめかみを掻いた。