。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。
―――何故そんなことを聞くのか、
でも俺の口からその言葉は出てこなかった。
「………交通事故だ。二人いっぺんに…」
「交通事故?それはいつ?」
またも聞かれて
「いいだろ、そんなこと。聞いてどうするってんだ」
いい加減苛立ってきて口調も乱雑になる。
俺は掴まれていた手を強引に振り払い、
スーツの襟元を正すと今度こそ立ち上がった。
〝あの時”事故で死んだのはうちの両親だけじゃない。対向車線を走っていた大型トラックの運転手も死んだ。
追突事故だった。居眠り運転だったらしい。
やりきれない事故だが、誰かを恨んでそれで両親が戻ってくるのなら俺はいくらでもその〝誰か”を憎む。
けれどそうしなかったのは、単にその恨みをぶつける相手が居なかったからだ。
トラック運転手に身内はおらず、天涯孤独の中年男だった。
そう考えたら相手も寂しい人生だったな。
伴侶も居ず、両親兄弟もいない。
喪主は兄貴の衛だった。
あの時もヤツは淡々としていて、涙一つ流さなかった。
その代わりと言ったらなんだが、タイガのヤツが袖口で目を擦りながら大泣きしていたっけ。
交通事故―――か。
お嬢の親父、先代の青龍会会長も、また事故だった―――
偶然か。
そうと片付けるには
安易な気がした。