。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。
「まだ及んでも?
フフっ。清いお付き合い、なかなかいいですね」
ドクターはどこか微笑ましいものを見るような顔で笑い、
「点滴、少し早いですね。目覚められたようですし少しスピードを落としましょうね」
点滴の速度を調節する〝つまみ”を調整して、点滴のスピードを落とした。
「ただの日射病ですが、今日は一日様子見のため入院をオススメします」
入院!!?
ヤだよ、そんなの。
あたしは超!がつくほど健康だし、第一、日射病ぐれぇで大げさなんだよ。
と思ったが
「入院してけよ。龍崎組のお嬢に何かあったら一大事だしな。みんな心配するぜ?
日射病もなぁ甘く見てると怖いんだぜ?ちゃんと水分補給してしっかり安静にしろ」
戒に注意されて
「戒くんの言う通りですよ、お嬢さん。水分が難しいのであれば塩飴もオススメです♪ふふっ」
と言ってまたも白衣のポッケからキャンディーの包み紙を取り出すドクター。
こないだはイチゴ飴だったよな。
どうなってるドクターのポッケは。
しかも見たことのないパッケージ。
赤いパッケージで〝トマトっぽい塩飴”とか油性マジックの手書き文字で書かれてあって、
「何でぃ!これは!!胡散臭いにもほどがある!」
ベシっ!
あたしはその塩飴をドクターのでこに投げつけてやった。
「ふむ。いつもと変わらず凶暴で短気なお嬢さんだ。異常なし、と」
と、カルテに書き書き。
おめぇもいつも通りだな!
「では私は入院手続きをしてきますね。ごゆっくり」
ドクターは大人しく出て行くかと思いきやカーテンを引くとちょっと振り返って
「戒くん、ここは病室なので〝及んで”はいけませんよ?フフッ」
「「誰が!こんなところで及ぶかっつうの!」」
またもあたしたちの声が重なり、あたしは枕をドクターに投げ飛ばしてやった。
けれどドクターはそれをあっさり、ひょいと避けて
「やれやれ、さっきは寝ていたおかげで静かでしたけど、急に賑やかになりましたね」
と苦笑を浮かべながらメガネのブリッジを直し、今度こそ部屋を出て行った。