。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。
ドクターが出て行ってまたも二人きり。
しん、と静かな時間が再来するかと思いきや戒はあたしの投げた枕を拾ってくれて、ついでに
「ポカリ、下の売店で買ってきたんだ。
日射病には良いって聞くからサ」
ずい、とぶっきらぼうにビニール袋を差し出され、あたしはおずおずとそれを受け取ろうとした。
さっきはドクターも居たから戒もいつも通りだったけど、けどやっぱり二人きりになると戒の言い知れない緊張が伝わってきた。
「ありが……」
けれど『ありがとう』の言葉は最後まで言えずに、受け取る前に戒の手から、するり
ビニールの取っ手が滑り落ち、ポカリがビニール袋ごと
ドサっ
静かな病室に音を立てて落ちた。
戒はそれを拾うように腰をかがめ、ゆっくりと床に膝を着いた。
落ちたポカリを拾うことはなくただベッドに手をついて顔を伏せる。
ぎゅっとシーツの端を握った手はわずかに震えていて
「怖かった」
たった一言呟いた言葉は、手や肩と同じように小刻みに、震えていた。