。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。
聞こえる―――
あたしを呼ぶあの声が―――
あたしは目を開いて、ほとんど反射的に戒の体を押し戻した。
唇が離れると、あの声も聞こえなくなった。
「……どうした…?」
戒がちょっと不安そうにあたしを覗き込んできて、
「…あ…イヤ!とかじゃねぇんだ…声が……」
「声?」
戒には聞こえなかったんだ。
何で――――
あんなにはっきりと聞こえたのに。
それともあたしはまだ夢を見ているのだろうか。
目の前の戒は現実じゃなくて、夢の―――……
「まだ混乱してるんだな。日射病で倒れたぐらいだし…」
戒の手が伸びてきてあたしの頬を優しく撫でる。
その手の感触は温かくて、いつもの戒のぬくもりを伝えてきた。
夢なんかじゃなくてやっぱり、現実だ。
戒の言った通りあたしはただ混乱してるだけだよ。