。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。
戒はそんな態度見せないけど、きっとキスを拒まれた、って思ったに違いない。
あたし…何やってんだよ。
絶対誤解されたって…
でも
「まだ本調子じゃないんだな。ポカリ飲めよ」
と、ぎこちない笑顔を浮かべて今度こそポカリを手渡してくる戒を見ると、変な言い訳すると余計に仲がこじれそうで
それが怖かった。
「ほれ」
ご丁寧にキャップまで開けてくれて、
「それぐらいできるよ」
と言うあたしの頭をちょっと撫でて
「病人は大人しく世話焼かれとけ?」
とまたも笑った。
けれどその手はすぐに離れていった。
「あのさ……」
あたしはポカリに口を付けることなく、ベッドに置かれた戒の手に手を伸ばした。
「ん?」
戒が振り返る。キラキラした西日の中、ゆっくりと。
お前は雪斗と違うから――――
たった一言言いたかったけれど、それより早く
コンコン
病室をノックする音が聞こえて
「お嬢、戒さん。もうそろそろ入ってもよろしいですか?」
キョウスケの声が聞こえてきて
「おー、悪りぃな。気遣わせちまって」
重ねた手のひらから手を抜き取り、戒は何でもないように立ち上がる。
戒のぬくもりだけ手の中に残って、あたしはただその手のひらをじっと見つめるしかできなかった。