。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。
この病院はあちこちで監視カメラが回っている。
下手な動きは取れないわけだ。
つまりは通気口ダクトへ入ろうとしてもバレバレだ。
だけど監視カメラだって全部を見張ってるわけじゃない。ある程度死角はあるわけで。
その死角ってヤツはどの建物でも共通して、‟ある場所”にある。
「またトイレですか」
朔羅の眠っている階の男子用トイレは、きれいに清掃が行き届いていた。
良かったぜ。
汚かったらそれだけでやる気半減だからな。
「基本中の基本だ。ここには窓もないし、出入り口は一つ。廊下ではすぐのところでカメラが回ってるしな」
俺は個室の一つを開けると響輔がジーンズのポケットから一台のスマホを取り出した。
「これを通気口へ。お嬢のお部屋の上辺りに置いてください。
半径1㎞でしたら侵入物を感知できます」
「これ、誰のだ?」
「俺のです。
つい先日購入しました。もちろんキャッシュで一括払い。登録も偽名なのでご安心を」
スマホと一緒にタブレット端末を取り出し
「こちらと繋がってます」と言ってタブレットを軽くかざす響輔。
用意のいいヤツ。
まぁ一括払いなら足がつく可能性も低いしな。
考えたもんだぜ。
「改造してあるスマホです。床に対する熱と重量、さらには微小の物音でも感知します」
はー…まったく、抜かりないやつだ。
俺はスマホを受け取り、個室に入った。
「見張りは頼んだぜ?」
響輔に念押しして、洋式便器の便座に土足のまま上ると扉に手を伸ばした。