。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。
扉に手を掛け、壁をよじ登ると天井との隙間に体を滑り込ませた。
天井は高く、響輔の助けだけでは手が届きそうになかった。
下を見ると響輔が俺を見上げている。
「下を見ない方がいいですよ」
と、響輔がありがたぁい忠告をくれたが、これぐらいの高さなら平気だ。甘くみんなよ。
俺はスマホを口でくわえると、通気口ダクトの入口をちらりと確認した。
ちょうど洗面台の上に位置している。
個室から洗面台までの距離は1m半てところか。
洗面台の上にはステンレス製バー状のスプリンクラーが設置してあった。
よっしゃ。
俺は天井からジャンプして飛び上がると、バーに手を伸ばした。
難なくバーに掴ることができ、体だけが宙ぶらりんになる。
そのまま空中逆上がりの要領で一回転。
「虎…と言うよりも猿みたいですね」
響輔が感心したように俺を見上げていて、
うっせぇ
俺は心の中で悪態をついた。口が塞がってるから何も言えない状態だ。
顎が痛てぇ。
俺。この病院で顎を酷使してる気がする。(前回はCherryBlossomⅡでしたね♪)
体が安定してバーに脚をひっかけると通気口ダクトは目の前だった。
スマホを口から手に持ち替えて、ようやくちょっと呼吸と顎が楽になったぜ。
「お前は朔羅のところに戻ってろ。俺はこのまま確認してくる」
響輔を見下ろすと、
「テレビ電話で中継してください」
響輔も自分のタブレットを掲げた。
「Copy that※」
俺はスマホを耳元で軽く振り、通気口ダクトの奥を見据えた。
(※)Copy thatとは無線機でやりとりするときだけに使う「了解!」の意味です。
アメリカの軍人さんや刑事さんが主に利用にする言葉ですね♪
まさに俺と響輔を繋ぐのはこの無線のみってことになるな。
俺はスマホを握って通気口へ、響輔はタブレットを手に朔羅の部屋へ
それぞれ別れた。