。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。
「な、何言い出すんだよ!キョウスケ、発言がおっさんくさいぞ」
あたしはわざと大きく笑ってキョウスケの背中をバン!
「痛っ…」
キョウスケは僅かに顔をしかめたものの、すぐにまた柔らかい表情になって
「おっさんくさいですか?」と、ほんのり笑った。
「おっさんくさいよ?」
「影が薄い、の次はおっさんくさいですか…」
「影は薄いよ?」
でも
「でもね―――あたし、キョウスケが居てくれて良かったって思う。
あたしにとってその存在はないとならないものなんだ。
それぐらいあたしの中であんたの存在はすごくすっごく
大きいんだ。
幸せになってほしいし、ずっとそうやって笑っててほしい。
あたしの我儘かな」
立てた膝に両手を置いてキョウスケを見上げると
「我儘ですね」
キョウスケは目を伏せて、やっぱりほんの少し笑顔。
「俺の幸せはお嬢の心を手に入れられたときにかなうんです。
でも最近
自分でも何が幸せか
分からんなってきた」
キョウスケがさらに目を伏せ、片方だけ立てた膝を抱えそこに顔を埋める。
「キョウスケ―――」
分からへん。
キョウスケの心の細い肩先は下がっていて、そこから心の声が聞こえてきた気がした。
「キョウスケ」
もう一度呼びかけると、キョウスケはゆっくりと顔を上げ、キョウスケを覗き込もうとしていたあたしの顔とが
―――思いがけずすぐ近くにあってびっくりした。
目をまばたくと、睫の先がキョウスケの瞼に触れ、キョウスケはくすぐったそうにまばたきをした。
至近距離で目と目が合って、慌てて顔を逸らそうとするも
視線を下にずらそうとするとキョウスケの形の良い薄い唇が―――
「お嬢」
そう動いた気がした。
ぅわぁ!!!
思わず心の中で叫び声を上げると
ガラリ
「お嬢さん、検温の時間ですよ」
「朔羅お嬢さん、お着替え持ってきましたよ~」
ドクターと、キリさんが…
考えたらこっちもかなり濃い組み合わせだが
目的は違えど一緒に二人が入ってきて、
た、助かったーーーー!!!!