。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。
タブレット端末が男の手からすり抜ける。
まるでスローモーションのような動きに見えたのは、単なる気のせいだ。
ベッドのシーツが翻り
カツ―――……ン…
タブレット端末が床に落ちた。
ガッ!
下からの勢いを付けたアッパーパンチ。
威力は十分だったはずだが、男は私の拳を片手で受け止めた。
――――!!
依然ケータイを耳に当てながら
「戒さん!非常事態です!!」
と相手に早口に伝える。
「よそ見してるとはいい度胸だな」
そうは言ったが、
このパンチを受け止めるとは、
相当強い―――
あの細腕から想像もできない素早さと威力だ。
益々油断がならなくて一旦は拳を引っ込めると、私は再び構えの姿勢に入った。
「お嬢っ!どうされたんですか!俺です
キョウスケです」
男が自分の名を名乗り説明するも
キョウスケなんて男知らない―――
知っていても何も変わらない。
私を呼ぶ‟あの男”以外
全員敵だから。