。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。




どれぐらい拳を構えて対峙していただろう。


キョウスケと名乗る男はひたすらに困惑した様子で私を眺めて眉を寄せている。


だが諦めたようにケータイを耳から離し、それをベッドの上に放り投げた。


それが合図になったかのように



私たちはそれぞれ拳を構えて、


だが一瞬だけ私の攻撃の方が早かった。


右の肩と腰を捻ると同時に、左拳を斜め上につき刺すようにして放ち


さっきと同じ左アッパーが男の顎ではなく、腹に命中した。


身長差があるから顎は無理だが、それでもダメージを与えるには十分だ。


男は小さく呻いたが、すぐに私の両肩を掴む。


すかさず前蹴上げと同じように下半身の力だけで真横に蹴り上げると、今度は男の脚に命中した。


男は足払いをされて倒れると思いきや、咄嗟にベッドについた手でバランスを取り


更にはその流れで今度は私の方へ横蹴りの要領で足払いをしてくる。


男のキックは正確で、目視だけでもかなりのスピードと威力を持ち合わせているのが分かった。


私は椅子を掴んでガードすると


バキィ…


椅子のパイプ部分が物の見事に破壊された。


破壊されたままの椅子を振り回すと、それも男は器用に避ける。


「ちっ!」


「お嬢、落ち着いてください!」



だが男は最初の一発以外、攻撃する気はないのか避ける以外何か仕掛けてくる気配がない。


埒が明かない。


そう思っていると


『おい!響輔っ!!どないしたん!朔羅に何かあったんか―――!!』


ベッドに放り投げたケータイはどうやらスピーカーにしてあるようで、そこから怒号が聞こえてきた。


低い男の声―――でも若い―――……


「だから言うたでしょう!!緊急事態やって!」


キョウスケが怒鳴り返す。


私は破壊された椅子を放り投げると、ベッドを飛び越えようと飛び上がった。


キョウスケも同じように…だが撃たれた腹が痛むのか、私の方が一瞬だけ早かった。





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