。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。
足裏が冷たいと思ったら、私は裸足だった。
入院でもしていたのだろうか。
ベッドの足元にウェスタンブーツが一足揃えて置いてあったからそれを履いた。
男から白衣を奪い袖を通し、何かの見取り図が表示されているタブレット端末と
自らの手でマガジンを装填した拳銃とを持ち、
私は部屋を出た。
――――
―
慎重な素振りで廊下を出ると
「何事だ!」
「銃声が聞こえたぞ!」
「どの部屋だ」
あちこちで野太い男の声が聞こえてきた。
私はタブレット端末を白衣の中に隠し持って、顔を俯かせると廊下を早足で歩いた。
この顔がどれだけ認知されているのか分からなかったが、気づかれれば強行突破をするつもりだ。
だがその心配も杞憂に終わった。
「不審者を見なかったか?」
一人の男に声を掛けられ、私は首を横に振った。
どうやら混乱のさなか、私を不自然なドクターだと見抜けなかったようだ。
男たちは諦めて再び捜索をしている。
廊下の影に隠れて、私はタブレット端末を開いた。
どうやら病院はかなりの規模のようで、東と西、中央に一棟ずつ建っているようだ。
私が居るのは中央棟の七階。
見取り図で位置関係を把握するよう指を這わせていると、図の一部がピカピカと点滅していた。それはゆっくりしたスピードで移動している。
私は目を細めてその動きを追った。
キョウスケが不審者だと言った者に違いない。