。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。
どう見ても寝ぼけてる―――ようには見えなかった。
「朔羅、お前どうしちまったんだよ…」
“眷属”なんて難しい言葉、お前が知ってるはずないだろ??
俺が朔羅の両肩を掴み揺すりながら問いかけると
「私は黄龍だ」
とまたも否定して俺の手を乱暴に振り払う。
何故俺のことが分からない―――
俺は混乱、困惑していて―――
朔羅が床に落ちた拳銃をゆっくりとした動作で拾い上げ、
その銃口を俺に向けてきても、その意味すら理解できなかった。
「忌むべき白虎―――我が積年の宿敵
―――と言いたいところだが、
お前を撃つ気はない。
返答次第ではな」
朔羅はまっすぐに拳銃を向けてきて、デザートイーグルを前に圧倒的に不利な立場に立たされていることに気づいた。
俺はそろりと両手を挙げる。
「お前はどうやって入ってきた。私をそこに連れて行け」
と温度のない淡々とした命令口調で言われ、俺はちらりと上の通気口ダクトを見上げた。
いつだって朔羅は暴君であたし様で、でもそれすらも俺からしたら可愛い我儘の範囲でそれが何だかすっげぇ可愛いのに
今はその愛らしいものが一ミリも感じ取れない。
朔羅は「撃つ」と言えば躊躇なく俺を撃つだろう。
悪い―――夢を見ているのだ。
なぁ
どうしたらお前は元に戻る?
どうしたらいつもみたいに笑ってくれる?
“白虎”なんて他人行儀な物言いじゃなく
「戒」って、笑いながら俺を呼んでよ。
そう思いたかったが、目の前に突き付けられたデザートイーグルの銃口は朔羅の目の色と同じだけ冷え切っていて
それが現実を教えてくれた。
俺はそろりと両手を挙げ
「いいけど……俺が入ってきたところ、この上は今ひでぇことになってんぜ?」
俺は天井の通気口を指さし。
朔羅が上を向いた瞬間……