。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。
タイガ ケイイチ――――
知っている名前だった。
何故私はこの名を知っているのだろう。
他の誰も思い出せないのに―――
私を呼んでいるのは
この男なのだろうか―――
分からない。
「恵ちゃんて呼んでネ♪」
男はこれまたふざけた笑顔を浮かべてにっこり笑い、
いや、私を呼んでいる男はこいつであってほしくないと思い直した。
またもふざけた言葉に私は拳銃を一層近くに近づけると男は途端に顔色を青くして目をまばたいた。
「はい!ごめんなさい!!僕が出過ぎた真似をっ」
何度目かの返答に私の方も意気消沈だ。
さっきの響輔や戒のように真っ向から向かって来ればやりやすいものを―――
私は拳銃を下ろすと再び男を見下ろした。
男のスーツの襟元で結ばれているネクタイに手を伸ばす。
大狼は
「……え…え?」
と狼狽した様子で、それでも私の手の行方を大人しく見守っている。
私は大狼のネクタイをゆっくりと解きにやりと笑った。
「…うさぎちゃん…
いつになく大胆だね。
でも場所が場所なだけに―――ちょっと……
僕、変態って言われるけどそうゆう趣味は…」
言いかけた男の唇にそっと指を置く。
「黙って」
短く言うと男はごくりと息を飲んで
やがて私のいいつけ通り大人しくなった。