。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。
本当の私―――
「それはお前をゴキブリを見るような目つきで見る私か」
思わず聞くと
「………ちょぉっとぉ…違うんだけど…まぁそんな感じかな」
大狼は返答に困ったように頭の後ろに手をやり眉を寄せて笑う。
やがて
「行きなさい」
大狼は私の手首からゆっくりとネクタイを解き、眉を下げて反対側の出入り口の方を目配せ。
「君が探しているのはもう一人の黄龍だ。
もう一人の黄龍はこちらの棟の特別病棟に居る」
大狼は簡単な見取り図を芝生の上に指でなぞってくれて、私はその見取り図を頭に叩き入れた。
「何故―――そうまでしてくれるんだ……―――」
私が聞くと大狼はうっすら笑った。
「さぁ。
君が私にとって大切な人だから―――かな」
大狼は小さく笑って私の頭を撫でる。
「行きなさい」
もう一度言われ
「行け」
今度は強く言われた。
私は立ち上がり、言われた通りの道順を歩き始めた。
大狼が教えてくれた通り、そこは敵の姿もなく誰にも会わずに目的地に付けそうだ。
前にもあった―――
こんなこと……
ううん、この男…大狼と交わした言葉じゃない。
あれは―――もう一人の黄龍と――――?