。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。
目的地に辿り着くと、私は拳銃を構えながらその場所を確認した。
部屋に入院患者の名前やらは振ってなくて、ぱっと見ただけでホテルのデラックスルームを思わせる佇まいに、ここにもう一人の黄龍が居るのか謎だったが
今は大狼の言葉を信じるしかない。
拳銃を握ったまま扉に手を掛けるとあっさりとそれは開いた。
病院らしくその扉は引き戸で、
カラッ
小さな音を立てて引くとすぐのところに、薄いカーテンが引いてある。
そろり
拳銃を構えながら音を立てずにそっと足を踏み入れ、カーテンを少しだけめくると、
そこには白衣を着た医者―――のように見えるが…またも見知らぬ男が一人デスクに向かって何やら書き物をしていた。
大狼と同じ年代のように思えた。
その横顔はさっき襲ってきた男たちと違ってどこか知的な印象で―――(インテリ風情のメガネのせいかもしれないが)
でも頭が良さそうな分、強そうには見えなかった。
色も白いし見るからにひ弱そう。
これなら簡単に突破できる。
そう踏んだ私は拳銃を構えながらカーテンを勢いよく開いた。
中に居た男はこちらをゆっくりと振り向き、拳銃を構えた私を目に入れるとびっくりしたように目をまばたいた。
コトッ
カラカラ…
ペンが落ちる音と転がる音が聞こえ―――
男は抵抗らしい抵抗はせずにすぐに両手をそろりと挙げる。
「お嬢さん、何の冗談ですか……?」
メガネの奥の眼を目いっぱい開いて、困惑したように声を掛けられその問いかけは私を知っている風でもあった。
白衣の胸元には
Dr.M.Tokitaと青地で刺繍されていた。