。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。
私は拳銃をゆっくりと下げると黄龍の元に駆けよった。
息をしているのかどうかでさえ怪しいぐらい、その横たわった体はぴくりとも微動だにしない。
まるできれいな人形を見ているようだ。
慌てて屈みこみ、黄龍の胸元に耳を寄せると
トクン、トクン…と僅かな心音が聞こえてきて
私はほっと胸を撫で下ろした。
「今はただの検査中ですよ、お嬢さん。
彼は大丈夫です」
いつの間にか私のすぐ背後に回ったドクターに声を掛けられ、
だが
私は拳銃を突きつける気はなくなっていた。
「どこか悪いのか?」
ドクターに聞くと
「頭がちょっと…ふふっ」
ドクターは冗談めかして笑い、私は今度こそ拳銃のスライドを起こした。
銃口をドクターに向けると、ドクターはまたも慌てて両手を挙げる。
「戯言を抜かすな。私にその手の冗談は通じない。
頭をブチ抜かれたくなければ、私の質問にだけ答えろ」
せっかちに言うと
ドクターは片方の手を挙げたまま、片方の手でこめかみをちょっと掻いた。
「何と申し上げて良いのやら……特に目立った異常はないのですが
定期健診です」
「その言葉を信じていいんだな」
違ったら殺す
と言う意味合いで銃口を向けると
ドクターは
「ええ、間違いないです。嘘はついてません」
はっきり言い切って肩をすくめた。