。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。
「お嬢さんは腕に怪我をされているようですが、手当てしましたのでもう大丈夫。
新しい部屋を用意させます」
怪我――――……!
「大丈夫です。メスの先で切っただけで傷もそう深くありません」
「メスっておおごとじゃねぇか!!」
思わずドクターの胸倉を掴んで怒鳴ると、ドクターは迷惑そうに顔を背け、
「手当てはしてあるので大丈夫です。それよりも彼の様子が心配です」
響輔を目配せ。
朔羅をとりあえずこの病室のベッドに横たえ、ドクターは今響輔の容態を診察している。
首筋に手を這わせ、
「意識を失っているだけです。恐らくブピカインを投入されたんでしょうね。
アンモニア水を持ってこさせましょう。気付け薬です」
ドクターの指示通りすぐに違うドクターがアンモニア水を持って走ってきた。
小さな小瓶だったが、それを響輔の鼻に近づけると響輔は、はっ!と目を開き
げほごほっ
と咳き込んで腰を折った。
「響輔っ!」
俺が慌てて響輔を抱き起すと
「―――……戒さん……お嬢が………」
響輔はうつろな目で俺を見上げてきて、それでもすぐに額の傷口が痛むのか「っつ……」顔をしかめる。
「朔羅なら大丈夫だ、なぁドクター」
俺は響輔を安心させるためにドクターを振りかえると
「熱射病の影響でしょう。CTは異常がありませんでしたが、恐らく精神的なものが影響しているんでしょう。
悪い夢でも見て寝ぼけた―――と考えるのが妥当かと」
と、こちらは真剣そのもの。
悪い夢を見て寝ぼけた―――……?俺にはそう見えなかった。
あれは朔羅じゃなかった。
じゃぁ一体あの女は―――
誰なんだ。