。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。
「はい」
たっぷり間をあけて電話に出ると
『やぁ、はじめまして。と言うべきかな』
機械か何かで声を変えてあるのだろう、それはボイスチェンジャーで聞くような不快な雑音で聞こえた。
「スネーク」
俺が問いかけると、響輔が目を開き、ドクターに掴まれていた手を乱暴に振り払った。
「何を……」
とドクターは不審そうに俺たちを眺めていたが
「しっ!」
俺が唇に手を当てると、押し黙った。
俺は一旦電話を耳から離すと『録音』ボタンを押し、再び電話を耳に当てた。
『龍崎 朔羅は無事かい?』
スネークはあざ笑うように……突如聞いてきて俺は目を開いた。
「お前!!朔羅に何したんや!!!!」
思わず怒鳴ると、響輔がゆっくりと立ち上がった。
『何をした―――か……
それに関しては申し訳ないが今はまだ種明かしができない。
だがしかしそうなったきっかけの……ヒントをあげよう』
スネークの言葉遣いはボイスチェンジャー越しだと言うのに、丁寧で上品さも漂っていた。
高い教養がある男だ、と言うことは分かる。
どっちだ―――
大狼とドクター……どっちの男だ―――
だけどもしかしたらあの二人じゃないかもしれない。とにかく喋り方だけで人物を想像するのは難しいことだった。
スネークは喉の奥でくすくすと不快に笑い、それが俺の神経を逆なでした。
「ごちゃごちゃうっせぇよ!!そのヒント言うんを早よ、言えや!!」
俺が電話口に怒鳴ると
『ドクターが使った点滴。あの中身をすり替えたのは私だ。
彼は何も気づいていない。
あの薬は私が開発した薬でね―――すでに実験で成功が立証されている。
だから黄龍にも使用してみたのさ。
さらに実験のときより改良を加えて出来たのが今回の新薬だ―――
君の抗原で―――黄龍が目覚めるように作り直した』
抗原――――何の抗原なんや―――
こいつ一体何を言ってやがる。
『抗原は―――君の何で反応するのかは今の私には分からない、
君の血液か、或は精液か―――あるいは唾液か―――…』
言われて俺は思わず口を押えた。
そう言えば
朔羅とキスを――――少し前にした。