。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。
あたしは蛇口をひねって勢いよく水を出した。
その横でシャンパングラスを傾け、水音に耳を澄ませながらごくりと一気飲み。
高価なことは確かだけどそれがおいしいのかどうか、もう分からない。
味が分からなくなるほど、あたしは飲んでいた。
視界が傾く。お湯につけた手がふやけそうだった。
ザー…
ひたすらに水音に耳を傾けていると
バタンっ!
遠くで音が聞こえた。
「ごめん、遅くなった」
男が一人この部屋に入ってきた。
今さら――――何だって言うのよ。
返信の一つぐらいしなさいよ。
喉まで出かかった悪態を、しかし口にすることはしなかった。訂正、できなかった。
立ち上がるのもやっとだ。
あたしはお湯から手をあげのろのろと顔を声のする方へ向けた。
「イチ、すまなかった」
男はもう一度謝り、あたしは裸足のままそっと歩き出すと男の姿を探しに歩き出した。