。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。
「ごめん、トラブルがあってちょっと遅れた」
男はシャワーの音がするバスルームの方に向かって言い訳を述べ声を掛ける。
トラブルって何よ。
あたしは思ったことも口にできずただ男の言葉に耳を傾けた。
男が洗面所の割れたガラスを見て息を飲む気配があった。
その割れた破片にそっと手を伸ばし、
次いで慌ててバスルームの扉を叩く。
ザー…
バスルームの中からシャワーの音が聞こえてきた。
「イっちゃん―――……」
声を掛けてきてもあたしは返事を返さなかった。
「イチっ!!私だ!!
ここを開けてくれっ!」
珍く余裕のない声音でバスルームの扉を叩き、男は叫ぶ。
このままじゃ扉を蹴破ってきそうだ―――そう判断したあたしは背後から声を掛けた。
「遅い」
一言呟くと
玄蛇が
驚いたように目を開きこちらを振り返った。