。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。
「でも…
まぁ忘れてくれないと我々の関係は成立しないな。
何だか矛盾してる」
玄蛇はちょっと苛立ったように前髪をぐしゃりと掻き揚げて
「王子様についててあげたまえ。
私はこれで退散するとしよう」
玄蛇はスーツの上着をひっつかみ、乱暴に肩に掛けた。
「ねぇ……ちょっと!」
と何か声を掛けると
「動きがあったらまた連絡する」
とそっけなく言いあたしの問いかけを遮り、玄蛇は部屋を出て行ってしまった。
あとに残されたあたしと、眠ったままの響輔―――
―――――
――
響輔は一晩は目を覚まさないだろう、と玄蛇は言った。
その言葉の通り、響輔は寝返り一つ打たずに昏々と眠り続けている。
玄蛇はここまでたどり着いたのは奇跡だって言った。
「まったく……無理しちゃって…」
ベッドの端に手をついて響輔の寝顔を眺め、彼の青白い頬をちょっと指先でつついてみると
それまで全然何をしても無反応だったのに、僅かに瞼を震わせて
「いちゆ…………」
小さく呟いた。