。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。
そうなったら話はまた別だ。
俺は自分の持ち札を早く出し過ぎたことに後悔した。
今は響輔の身柄もイチの手の中だ。
響輔を取り戻すときでも遅くなかったはず。
早まったことをして、またも舌打ちが漏れた。
「それで?あんたの持ってる情報てのは?」
俺がせっかちに聞いたのは、妙な間を…考える暇を与えたくなかったから。
『杉並区の焼死体のこと―――
聞きたがってたわよね。
あれ
スネークじゃないわよ』
イチはすぐに答えてくれた。
どうやら隠す気はなさそうだった。
「何でそんなことが言えるん?
証拠は」
俺はまるでイチがすぐ近くに居て笑って喋っているのを思い浮かべて、無機質な壁を睨み上げた。
『あいつは“隠したい殺し”はもっとうまくやるって。
酸で遺体を溶かすそうよ。どう?ちょっとはビビった?』
イチがせせら笑うように言ったが、
「なるほど、クリーナー(掃除屋)か。ヤツは間違いなくプロやな」
俺は目を細めた。掃除屋の話は割と知られている。俺がアメリカの学校に居たとき教えられた。
イチは面白くなさそうに言葉を飲み込んだ。
でも裏を返せば
“隠すつもりはない”
とも捉えられる。