。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。
思わず大きなため息が出て俺は朔羅の元に歩いていった。
その流れで朔羅を抱きしめる。
俺の大好きなチェリーブロッサムの香りが腕の中いっぱいに広がった。
きゅっと目を閉じて朔羅の香りをいっぱいに感じ取ると、その頭にそっとキス。
「おかえり」
おかえり、俺の朔羅―――
俺の言葉に朔羅が腕の中で首を傾げながら、俺の腕にそっと手を伸ばす。
「―――……た…だいま―――?」
分けがわからないと言った感じで不思議そうに挨拶してきて、俺はさらに朔羅の頭を強く引き寄せた。
すると朔羅は珍しく自分から俺の手を取ると、腕に手を絡ませてきた。
ドキリとして目をまばたく。
まだクスリが効いていて、違う朔羅―――『黄龍』かもしれないと思ったが
「〝おかえり”じゃねぇよ!
どこ行ってたんだよ、もー!響輔もいねぇしさっ!
変な夢見ちまって怖くなったのに……」
そこまで言って朔羅は慌てて口を噤んだ。白い頬にほんのりバラ色が指している。
ちょっと頬を膨らませて上目づかいで俺を見ているその大きな目は僅かに潤んでいて、ドキリと胸が鳴る。
「今、ガキみたいなこと言ってんじゃねぇよ、とか思ったろ」
そう言われて、その「ドキっ」が通常の種類のものだと気づき、俺は朔羅に気づかれないようにそっと胸を撫で下ろした。
可愛い俺の朔羅―――
「んなこと思ってねぇよ。悪かったな一人にして」
俺は朔羅の頭頂部を見下ろし、つむじにチュ。チェリーブロッサムに混じって何やらフルーツの香りが漂ってくる。
「ところで変な夢って……?」
「んー………何かすっげぇ変な夢。誰かに呼ばれて、その誰かを探しに行くんだけど
あたし、その途中で
お前や響輔を攻撃したんだ」
俺は朔羅のつむじに唇を落としたままその場で固まった。
今も尚、まだはっきりと残っているあの不快な機械音、スネークの言葉を思い出す。
『抗体は―――君の何で反応するのかは今の私には分からない、
君の血液か、或は精液か
―――あるいは唾液か―――…』