。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。
PiPi
小さな機械音が鳴り、我に返った。
テーブルに置いたノートPCが、メールが届いたことを知らせてくれたのだ。
タバコをくわえたままウィスキーグラスを手にしてのろのろとテーブルまで歩いていった。
その歩みは重く、そこまでたどり着くまで歩くのでさえひどく億劫だった。
珍しく酔ったのか、それとも自分の考えに嫌気がさしたのか―――
どのみち『酒で身を亡ぼす』か『女で身を亡ぼす』か。
私の中にイヤなワードがもう一つ浮かび上がり頭を振った。
やっとの思いで、テーブルにたどり着くと
開いたままのノートPCが青白い光を放っていた。
片手で長ったらしいパスワードを入力するとぱっと画面が切り替わる。
その中では黒いチャット画面が開いていた。
T:>>久しぶりね。守備はどう?
〝T”と言うのはもちろん通称であり、本来の名前を暗号化したものだ。Tと言うイニシャルならいくらでもいるからね。そう簡単にこの相手が誰だか分からないだろう。
そのそっけない文字を見て私はくわえたばこをしたまま、
S:>>上々さ
それだけ答えてノートPCを閉じた。
〝T”のメールを読んで益々気分が落ちた。グラスをテーブルに置き、私はその場に思わずしゃがみ込んでしまった。