。・*・。。*・Cherry Blossom Ⅳ・*・。。*・。
その一瞬で私は女からカードキーを受け取った。
何でもない素振りでそれをスーツの胸ポケットへ仕舞い入れる。
そう
これが我々が取引に使う〝手”だ。
すれ違い様に女が振り返った。みずみずしい薔薇の香りがふわり、と漂ってくる。
「想像より随分イイ男」
女がほとんど聞こえない小さな声で色っぽく唇を動かす。
そして小さくウィンクを寄越してきた。
残念
取引じゃなければお相手願いたい相手だったが―――
私もうっすら笑い、次の瞬間何でもないように二人して背を向け合った。
――――
――
女から受け取ったカードキーが示す部屋番号をノックすると
中からスーツ姿のこれまたいかつい男が顔を出した。
私の顔を確認すると
「入れ」と短く顎をしゃくる。
言われた通り中に入ると、すぐにボディーチェック。むさくるしい男二人に体のあちこちを探られるのは良い気がしないが、それもすぐに終わり
「クリアです」
と男の一人が窓際の席に座った
女
を目配せ。
T――――……もとい
現朱雀会会長
十朱 志紀子(Shikiko Toake)が
組んでいた腕をゆっくりと解き、ほっと溜息をはいた。